AZ A BAJ・・

東欧の街角から日々の徒然
山のパガニーニ
ルーマニアの北部、昔ながらの伝統的な生活が、
今でも色濃く残るマラムレシュ地方、緑美しい東欧の秘境。
この地方の村の音楽家を訪ねて何年経つのだろう。

Ionu lu' Grigore

戦前、この地方に住んでいたユダヤ人のために演奏されていた曲を
覚えているロマ(ジプシー)ミュージシャンを探していたので、
年老いたベテランの音楽家を訪ねる事が多かった。

家に招いてもらって、同居人は録音を、わたしは撮影をする、
忘れられない時間がたくさんある。でも、残念ながら、
その後、亡くなったミュージシャンも少なくない、時が経つ事の無常、
戦前の事を覚えている人を探すのは難しい時代になってきた。

Ionu lu' Grigore

ちょっと前、パガニーニとニックネームのついた
サリシュテ村のヴァイオリン弾きの訃報を聞いた。
胸がつぶれる思いだった、
また、ひとつの時代が終わってしまったのかと・・・。

数年前、初めて彼の家を訪ねた時、病み上がりにもかかわらず、
突然の訪問客のわたしたちに、極上の笑顔で演奏を披露してくれた。

Ionu lu' Grigore

2度目に訪れた時は、見違えるように元気いっぱいで、
別の村の音楽家を訪ね、一日中、いろいろな曲を弾いてくれた。
休憩にパーリンカ(果物の蒸留酒)を飲みながら、タバコをふかしながら。



Ionu lu' Grigore

秋の美しい光の中、パガニーニの奏でる音が山に吸い込まれていく。

Ionu lu' Grigore

この豊かな時間を、わたしは忘れない、
きっと天国でも演奏しているんじゃあないかな、笑顔で。

(ルーマニアのテレビの特集、彼の思い出のユダヤのメロディー)


| 東欧音景 | 23:27 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
ウクライナからの知らせ
ちょっと前に悲しいニュースが届いた。
ハンガリーとルーマニアの国境に近い
ウクライナの小さな町 Tjaciv (ハンガリー語ではTécső)に住む
ツィンバロム奏者、ミシャが亡くなったのだ。

Tecsoi banda

彼らの住むティサ川沿いの町に、
わたしは残念ながらまだ足を運んでいない。

ルシン、フツルと呼ばれる山岳民族の住むザカルパッチャ地方、
その町で、代々引き継がれてきた音を演奏する
ジプシー・ミュージシャン一家に生まれたミシャと
アコーディオン奏者の兄、ヨーシュカ、ドラムのユーリはいとこで、
ヴァイオリン奏者のイヴァンはこの町の出身ではないが、
このミュージシャン一家の娘と結婚して家族の一員になった。

Tecsoi banda

彼らはハンガリーのレーベルEtnofonからCDを出していて、
ここ数年は何度もブダペストに来ては演奏している。
その度に時間があれば足を運んでいた、
彼らの繰り出す音はすごい、じっとしては聞いていられない。

Tecsoi banda

ザカルパッチャ地方はもともとはユダヤ人も多く住んでいた地域だ。
彼らのレパートリーには、かつてのユダヤ人コミュニティーのために
弾いてきた曲もある。同居人が追い続けている
東欧ユダヤ音楽の音源はここにも残っているのだ。

Tecsoi banda

ミシャの葬式に行く事は出来なかったけど、
後日、参列した友人がその様子を教えてくれた。
村の女性達の悲しく美しい歌声が響いていたと言う。

バンドのメンバーは当日結婚式での演奏の仕事が入っていて
弟のヨーシュカはミシュの亡骸を埋め、
結婚式のパーティー会場に急いで駆けつけた。
音楽が無くては、ダンスが無くては、結婚式は始まらない。

彼らの土地では音楽が人生の節目に重要な意味を持っている。

Tecsoi banda

(去年10月にバンドがブダペストに来た時に同居人が撮影した
 ビデオです。この夜、ミシャはブダペストには来ていたのですが、
 体調がすぐれずに、演奏することが出来ませんでした。)



| 東欧音景 | 21:17 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
チャーンゴー・バール
先週末はカーニバルの週末だった。
ハンガリーでもモハーチというクロアチア国境の町では
仮面をかぶったブショー達が大暴れしたはず、
今年は行けなかったのが残念!
(詳しくはこちらのエッセイのページへ、『冬を葬る』をクリック)
中国正月も同じ週末だったので世界中でなんともにぎやかだったはず。

ブダペストでは土曜日の夜にチャーンゴー・バールが開かれた。
ルーマニアはモルダヴィア地方に住むハンガリー系の少数民族
『チャーンゴー』と呼ばれる人々の伝統音楽と踊りの祭だ。

10時過ぎ、会場に到着、コンサートホールに足を踏み入れると
踊る人々の渦と熱気に圧倒される、予想通りの盛り上がり。

Csango Bal

舞台の上にはモルダヴィア地方から招待されたミュージシャン。

Csango Bal

こんな素敵なカップルのダンスが見れるのも嬉しい。

Csango Bal

ひとしきり、コンサートホールに溢れる熱気を楽しんだ後、
喉が渇いたのでワインでも飲むかとバーのあるロビーへ。
そこではバグパイプとドラムがダンスの輪を作っている。

Csango Bal

Csango Bal

ワインで喉を潤した後、コンサートホールの横の部屋をチェック、
ハンガリーの伝統文化、民俗音楽と音楽家を撮影し続けている
わたしの尊敬する写真家の1人、カーシャ・ベーラの展示があるはず。

部屋はすでにターンツ・ハーズ(ダンスハウス)となっていて空気が熱い。
ミュージシャンはちょうど一年前にブダペストで見たこの二人

Csango Bal

う〜ん、あいかわらずいい顔・・・。

Csango Bal

Csango Bal

そして、次にこの小部屋で演奏したのは
さっきコンサートホールの舞台に上がっていたミュージシャン、
こちらもなんともいい表情・・・。

Csango Bal

Csango Bal

もちろん、ダンスも盛り上がる。

Csango Bal

Csango Bal

世界中がカーニバルの週末、ブダペストの夜はダンスで更ける。

Csango Bal

(おまけビデオ!)
時間のある方、同居人の撮ったビデオで雰囲気を味わってください。



| 東欧音景 | 22:46 | comments(3) | trackbacks(0) | pookmark |
チャリダー夫婦のハネムーン
ひさしぶりに気持ち良く晴れた。
温度も上がったので、半袖を着て自転車に乗る。

先週の話、アメリカ人の友人の友人の夫婦がブダペストに来た。
彼らはイスラエルからアイルランドまでの自転車の旅の途中に
ブダペストに立ち寄った。ところどころ電車にも乗っているけど、
4月にイスラエルに渡って以来、走行距離はすでに2000Kmを越えている。

友人と初めて会ったのは北京の安ホテルの相部屋だった。
4つのベットが並ぶ部屋の先客だったカリフォルニア出身の
デンマーク人の、この2人の女性は当時ベルリンに住んでいた。

数日間楽しい時を一緒に過ごし、2人はベルリンに帰る時、
わたしにいつでも遊びに来てねと、連絡先を残していった。
その頃はヨーロッパに行きは予定してなかったけど、
半年後、流れ流れてわたしはベルリンの駅に降り立っていた。
そして、その居心地のよさに、数ヶ月滞在する事になる。

数年前にベルリンを離れて今はカリフォルニアに住むから
先月久しぶりにメールが来た、彼女の友人夫婦が旅に出るので
ブダペストに行った際は面倒を見てくれないかとの事。

ちょうど、アイルランド人の友人
帰省していたので、彼らのフラットを数日貸してもらった。
キャンプを繰り返していたチャリダー夫婦
このブダペストらしいオールドファッションなフラットに感動して
予定より少し長くブダペストに滞在した。その間、自転車には乗らずに
ブダペストの街をぷらぷら徒歩で散策しながら。

木曜日の夜、行きつけのカフェで彼らと待ち合わせをして
セルビア料理(肉!)を堪能し、その後、ハンガリーらしいところ
と言う事でターンツ・ハーズ(ダンスハウス)に連れて行く。

ターンツハーズ

7区の文化センターで開かれているこのターンツハーズ、
大部屋ではモルダヴィア地方のチャーンゴーの音楽が、

ターンツハーズ

バーのある部屋ではトランシルヴァニア地方の音楽が楽しめる。

ターンツハーズ

まずはバーで飲み物を買って大部屋に行き、
輪になって踊る人々のステップに見とれながら音楽を楽しむ。

ターンツハーズ

ターンツハーズ

バーに戻ると、こちらでもダンスが!

ターンツハーズ

土曜日の朝、彼らはヨーロッパの西の端にあるゴールへと
再びペダルをこぎ始めた。明け方どしゃ降りの雨だったので心配したけど、
彼らが出発する頃には止み、少ししたら太陽が顔を出した。

ステキな旅になりますように!

ターンツハーズ

DavidとHannahのブログ(英語)
| 東欧音景 | 23:56 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
モルダヴィアの音
水曜日、ブダ地区にある文化センターで毎週開かれている
チャーンゴー・ターンツハーズ(ダンスハウス)に行った。

チャーンゴー(Csángó)とはルーマニアの東北部、
モルダヴィア地方に住むハンガリー人の事。ルーマニア西北部、
トランシルヴァニア地方とはカルパチア山脈で分けられ
独自の文化がある。そのモルダヴィア地方から村の音楽家が
ブダペストに招待されていたので会いに行ってきた。

ミュージシャン

ヴァイオリン弾きのおじいちゃんは83歳、隣のおじいちゃんは78歳
モルダヴィア地方に伝わるコブザと呼ばれる楽器を演奏する。

2人ともルーマニア人だが、ハンガリー語の単語も飛び出る。
チャーンゴーの音楽はモルダヴィア地方の音楽だ、
彼らは近隣のチャーンゴーの村でも演奏をしてきた。

ミュージシャン

コブザの原始的な音がジャガジャガジャガとリズムを取る、
そのリズムにヴァイオリンのメロディーが乗る。
二人とも、なんとも味のある『いい顔』で気持ちよさそうに
音を奏でている、そして彼らの前でダンスが繰り広げられる。

バイオリン弾き

コブザ

ダンス

曲の合間においしそうにビールを飲む2人。

ビール

ルーマニア語でなにやらジョークも飛び出すが、
全部理解できなかったのが残念!もっとしゃべれるようになりたい。

ミュージシャン

ダンスは輪になってステップを踏むサークルダンスが基本、
曲によっていろいろなステップがある。一定のリズム、同じ旋律が
何度も繰り返され、輪に囲まれた空気が少しずつ高揚していく。

ダンス

曲によってはペアで踊る場合もあり、
時にはダンスの輪の中で何組かのカップルが踊る事もある。

ダンス

一旦、休憩となるが、ダンスフロアに下りて
さらに演奏を続けるお茶目なヴァイオリン弾きのおじいちゃん。

ヴァイオリン弾き

後半はコブザに変わってツィンバロンの登場。
彼のツィンバロンはルーマニアでよく見る小さなツィンバロン、
40年前のレギン(Reghin・楽器の工場で有名な街)産。

ツィンバロン

数年前レギンまで足を伸ばした際、同居人
同じ型のツィンバロンを購入した。年月が経つとこんなにも
深い色になるのかと思うとかなり楽しみ。ハンガリーでは
100年ほど前に大きなツィンバロンが主流になって以来、
この小さなツィンバロンは見る事がなくなったと言う。

彼らの奏でる音はダンス・ミュージック、
メロディーやリズムを変化させながら休むことなく、
時に20分以上も演奏が続きダンスフロアを盛り上げる。
きぃ〜んと響き渡るヴァイオリンの音はワイルドで、
それをフォローするツィンバロンの音はファンキーだ。
二人合わせて161歳のデュオが若い世代を踊らせる、

ダンス

素敵過ぎる!

Moldavian Musician
| 東欧音景 | 21:55 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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